自社の春闘結果を他社や産別と比べるとき、平均の賃上げ率だけを見ても、実際にどれだけ賃金水準が上がったのかは分かりません。定期昇給を含む数字なのか、ベアなど賃金水準の引上げ部分なのかで、数字の意味が変わるからです。
フード連合の2026年春闘では、定期昇給相当分を含む総額が16,136円・4.99%、ベア等が11,473円・3.51%でした。この記事では、企業規模別や有期・短時間・契約等労働者の結果も含め、数字をどう読めばよいかを整理します。
数値は、労働政策研究・研修機構(JILPT)が2026年9月25日に公表したフード連合定期大会の取材記事に基づきます。フード連合が公開した集計表そのものは、本稿作成時点では確認できていません。
まず押さえたいのは「総額」と「ベア等」の違い
定昇相当分込みの総額
16,136円・4.99%
ベア等
11,473円・3.51%
4.99%は、定期昇給相当分を含む総額の賃上げ率です。一方、3.51%はベア等の部分です。二つは同じ数字ではありません。
フード連合は2026年春闘で、定期昇給相当分を5,000円と置き、定昇制度が確立している組合にはベア1万3,000円程度、定昇が5,000円未満または制度未確立の組合には総額1万8,000円以上を要求基準としていました。したがって、自社と比べるときも「定昇込みの総額」と「賃金水準を引き上げた部分」を分けて見る必要があります。
ベアと定昇の違いは「ベアと定昇の違いとは?給与が上がる仕組みを図で解説」、賃上げ率の見方は「賃上げ率はどう計算する?」で詳しく解説しています。
300人以上と300人未満では、引上げ額に差がある
300人以上
16,728円・5.02%
300人未満
13,240円・4.82%
300人未満の総額は13,240円・4.82%でした。引上げ額は前年同時期より102円増えた一方、率は0.12ポイント下がっています。300人以上は16,728円・5.02%で、こちらは前年より額・率ともに下がりました。
この数字だけで、企業規模による賃金格差がどこまで縮んだかを判断することはできません。ただし、同じ産別の中でも企業規模によって引上げ額に差があることは確認できます。自社と比べるときは、規模の近い企業の結果を分けて見る方が適切です。
有期・短時間・契約等労働者の結果は、正社員とは分けて見る
| 対象 | 要求 | 改善を獲得 | 加重平均 |
|---|---|---|---|
| 月給制 | 45組合 | 31組合 | 27組合で11,318円 |
| 時給制 | 35組合 | 19組合 | 14組合で58円 |
月給制の有期・短時間・契約等労働者では、45組合が賃上げを要求し、31組合が何らかの改善を獲得しました。加重平均は、27組合で11,318円です。時給制では35組合が要求し、19組合が改善を獲得。14組合の加重平均で58円の引上げとなり、平均時給は1,306円でした。
正社員の総額平均と、月給制・時給制の集計は対象も単位も違います。数字を並べるときは、同じ母集団の結果として扱わないようにします。
自社で比べるなら、平均率より「改定後の賃金」を確認する
産別の平均値は、自社の要求率をそのまま決める数字ではありません。自社の改定結果と見比べ、どの層の賃金がどれだけ動いたかを確かめるための材料として使います。

例えば、自社の改定後賃金を等級・年齢層・職種ごとに並べると、平均値だけでは見えない差を確認できます。初任給を大きく引き上げた場合は、その上の年齢層との賃金差がどう変わったか。昇格したときの上昇幅は、役割の違いに見合っているか。こうした点を、自社の賃金表で確認します。
フード連合の2026年春闘を読むときも、4.99%という平均率だけで終わらせず、総額とベア等、企業規模、雇用形態を分けて見ることが重要です。春闘全体の見方は春闘総合ガイド、別産別の例はJAMの2026春闘と賃金格差を参照してください。
出典
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)「賃上げは定昇分込みの加重平均で1万6,136円、4.99%に/フード連合定期大会」2026年9月25日
注記:数値はJILPTの大会取材に基づきます。自社の賃金表でどのように比較するかという部分は、Union Strategyによる整理・提案です。
