賃上げ率はどう計算する?「5%」の意味と春闘集計の読み方

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賃上げ率は増えた額を改定前の額で割り、100を掛けた百分率。同じ対象・給与項目で計算します。

「今年の賃上げ率は5%」と聞くと、給与がどれくらい増えるのか気になります。賃上げ率は、改定前の賃金に対して増額分がどれだけあるかを示す数字です。ただし、自分の昇給率と、ニュースで見る労組全体の平均率は、同じ数字ではありません。基本の計算から、春闘集計の読み方まで順に見ていきます。

基本の式は「増えた額÷改定前の額」

賃上げ率は、次の式で求めます。

賃上げ率(%)=(改定後の賃金-改定前の賃金)÷改定前の賃金×100

厚生労働省の調査でも、賃金の改定率は、改定額を改定前の賃金に対する割合で示しています。厚生労働省の用語定義

計算方法を示す仮定として、月額30万円が31万5,000円になった場合を考えます。 増額は1万5,000円なので、1万5,000円÷30万円×100=5%です。 逆に、月額30万円を5%引き上げるなら、増額は30万円×0.05=1万5,000円となります。 実在する会社の数値でも、5%を要求すべきという目安でもありません。

この式で使う前後の額は、同じ給与項目にそろえます。基本給の増額を知りたいときは基本給同士で、手当を含む所定内賃金なら同じ手当の範囲で比べます。残業が増えて支給総額が増えた分を、そのまま賃金改定による増額に含めないようにします。

賃上げ率は改定後と改定前の差額を改定前の賃金で割り、100を掛ける。対象者と給与項目を前後でそろえる計算図。
厚生労働省の改定率の定義に基づくUnion Strategyの説明図。

定昇込みの率と、ベアの率を分ける

定期昇給は、既存の制度に沿った昇給です。ベースアップは、賃金表を改めて賃金水準を引き上げることを指します。詳しい仕組みはベアと定昇の違いで説明しています。

会社が「定昇込みで5%」と回答したとき、その5%には二つの要素が含まれ得ます。ベアの割合を求めるなら、ベアによる増額だけを、改定前の同じ賃金で割ります。

ここで分母を変えないことが大切です。定昇込みの率では手当込みの月額を使い、ベアの率では基本給だけを使うと、二つの率を内訳として足し合わせられなくなります。比較する対象者、給与項目、基準月をそろえたうえで、増額の中身を分けます。

2026年春闘の「5.01%」は何の数字か

連合が2026年7月3日に公表した最終回答集計では、平均賃金方式の定昇相当込み賃上げは、加重平均で月額1万6,400円、5.01%でした。集計時点は7月1日10時、対象は回答を引き出した5,368組合です。連合・2026年最終回答集計

平均賃金方式は、組合員一人当たりの平均賃金をいくら引き上げるかを扱う方式です。個々の給与への配分は、それぞれの制度や労使の合意に基づいて決まります。したがって、5.01%は、この集計に入ったすべての人の給与が一律に5.01%上がるという意味ではありません。

同じ資料には、賃上げ分が明確に分かる3,732組合について、賃上げ分が月額1万1,510円、3.50%だったことも載っています。二つの行は対象組合が異なるため、5.01%から3.50%を引いて「定昇は1.51%」と求めることはできません。

公表されている率何を集計した数字か
5.01%平均賃金方式で回答を得た5,368組合の、定昇相当分を含む賃上げ
3.50%賃上げ分を明確に把握できる3,732組合の、賃上げ分

出所は上記の連合最終回答集計、いずれも規模計・加重平均です。全国の全企業・全労働者を集計した数字ではありません。

「平均」には、人数を反映する方法がある

連合の平均賃金方式の集計は、組合員数による加重平均です。小さな組合と大きな組合をそれぞれ一件として同じ重みで数える単純平均に対し、加重平均は人数を反映します。どちらを使うかによって、全体の見え方は変わります。連合・平均方式の解説

自社でも、集計方法を明らかにしておくと説明が安定します。同じ対象者の賃金総額がどれだけ増えたかを知りたいなら、「その人たちの増額合計÷改定前の賃金合計×100」で計算できます。これは個人ごとの昇給率を単純に平均する計算とは異なります。

年度によって対象者が入れ替わった平均賃金を比べる場合には、人員構成の変化も入ります。賃金改定の効果を説明したいのか、会社全体の支給実態を説明したいのかに合わせて、使う数字を選びます。

組合員への説明では、率に月額と内訳を添える

率は、元の賃金額が違う職場でも変化の大きさを表せる一方、毎月の給与がいくら増えるかは率だけでは伝わりません。春闘結果を伝えるなら、賃上げ率、一人当たりの月額、定昇とベアなどの内訳を並べると、読み手が理解しやすくなります。

他社と比べるときも、まず定昇込み同士、あるいはベアなどの賃上げ分同士を並べます。そのうえで、自社がどの賃金水準を目指すかを考えます。率は「どれだけ増えたか」を表す指標であり、「増えた後の給与が十分か」を答える指標とは役割が違います。

出典・参考資料

  • 厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査・主な用語の定義」、2025年10月公表。改定額・改定率の定義。PDF
  • 連合「2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果」、2026年7月3日公表、7月1日10時集計。平均賃金方式・規模計の額、率、対象組合数。PDF
  • 連合「Q&Aでみる賃上げの方法と用語解説」、公表年月の記載がない常設ページ。平均賃金方式、加重平均と単純平均の説明。公式ページ

出典確認日:2026年9月21日。計算例と説明用の図はUnion Strategy作成です。

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