ものづくり産業の労働組合でつくるJAMは、2026年春闘で過去最高の賃金改善額を獲得しました。その一方、企業規模による賃金格差の拡大を止める点では課題が残ったと総括しています。賃上げの成果が大きいのに、なぜ格差が残るのでしょうか。公表された結果と、その意味を見ていきます。
JAMとは、どのような労働組合か
JAMは、機械・金属など、ものづくり産業の労働組合が集まる産業別労働組合です。中小企業の組合が多いことを特徴としています。企業ごとの労働組合は「単組」と呼ばれ、JAMは賃金情報の提供や共闘を通じて、それぞれの交渉を支えています。JAMの概要
今回取り上げるのは、JAMの定期大会で確認された2026年春闘の総括です。労働政策研究・研修機構(JILPT)が、2026年9月9日に大会の取材記事を公表しました。全国すべての中小企業を対象にした統計ではなく、JAMの交渉結果と組合員の賃金調査に基づく評価です。
860組合が賃金改善を獲得、単組平均は1万2円
JILPTの取材によると、6月19日時点の最終結果では、交渉単位1,417組合のうち860組合が賃金改善を獲得しました。賃金改善額の単組平均は1万2円で、改善額と獲得組合数のいずれも、1999年のJAM結成後で過去最高でした。JILPTの大会取材
「単組平均」は組合単位の平均であり、組合員一人ひとりの改善額を人数で加重した平均とは異なります。また、ここでいう賃金改善額を、そのまま定期昇給を含む毎月の給与の増加額と読むこともできません。JAM会長は大会あいさつで、ベア平均が初めて1万円を超えた成果として述べています。JAM「第28回定期大会あいさつ」
賃金表そのものを引き上げるベアと、年齢・勤続・評価などに応じて既存の制度内で給与が上がる定期昇給の違いは、ベアと定昇の基礎解説で扱っています。
規模間の賃金差は、むしろ広がった
同じ総括では、JAMの組合員賃金全数調査に基づき、規模1,000人以上と300人未満の所定内賃金の差が、2023年からの3年間で4万6千円台から6万4千円台へ広がったとされています。所定内賃金は、残業代などの超過労働給与を除いた賃金です。JILPTの大会取材
この二つの結果は、矛盾していません。賃金がいくら上がったかは「増額」の話で、他社と比べていくらの水準にあるかは「到達した額」の話だからです。比較先も賃金を上げているとき、自社の改善が大きくても、差が縮むとは限りません。

ただし、今回の資料だけで格差拡大の原因までは特定できません。職種、年齢構成、企業の収益や取引条件などの影響を切り分けた結果ではないためです。公表された規模間の差額を、そのまま個々の企業の「不足額」に置き換えることもできません。
次の春闘に生かせるのは、成果を見る二つの物差し
今回のJAMの総括から、自組合でも使えると考えられるのは、賃上げ額と改定後の水準を併せて見る方法です。
まず、今年いくら改善したかを整理します。次に、比較したい同業・同職種の賃金水準に対して、改定後の自社の位置を確かめます。二つを並べれば、「今年は大きく上がった」「なお水準差が残る」という説明を、同時に組合員へ伝えられます。
水準を調べる際には、自社だけを改定後、比較先を改定前の数字にしないことが基本です。職務や年齢なども対応する資料を選びます。全社平均では採用や退職による人員構成の変化が混ざるため、可能なら同じ条件のモデル賃金や職務別の水準を使います。仕事の対応付けは、等級別賃金の比較方法が参考になります。
ここまで確認して差が残るなら、その差を次の要求でどう扱うかを検討できます。差が縮まった場合は、今年の成果として説明できます。格差が解消していても、生活費の上昇や人材確保など、別の理由で賃上げが必要になることはあります。
賃上げの成果を認めることと、残る課題を示すことは両立します。JAMの2026春闘は、その両方を見る必要を示した結果と読めます。
出典・参考資料
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)調査部「2026春闘について、格差拡大の歯止めでは『課題を残した』と総括/JAMの定期大会」、2026年9月9日公表。6月19日時点の最終結果、賃金改善額・獲得組合数、賃金格差に関する総括を参照。
- JAM「『村田きょうこ』を再び国会へ『できることは、すべてやる』」所収「第28回定期大会あいさつ(抜粋)」、ウェブ掲載2026年9月4日。ベアの成果と格差についてのJAM自身の認識を参照。
- JAM「JAMの概要」、公表年月の記載なし、2026年9月21日確認。組織の対象産業と活動を参照。
出典確認日:2026年9月21日。自組合での活用方法はUnion Strategyの解説です。規模間の格差を生んだ原因の分析ではありません。
