最低賃金の引上げは、賃金表の最も低い金額だけの問題ではありません。下位等級の賃金を引き上げ、上位等級を据え置けば、等級間の差が縮み、昇格したときの上がり幅も小さくなることがあります。
2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円となりました。ただし、全国一律にこの金額が適用されるわけではありません。改定内容と月給の時間額換算を押さえたうえで、最低賃金を守っているか、等級間の賃金差がどう変わるかを分けて解説します。
2026年度の全国加重平均は1,177円、引上げは56円
厚生労働省の全国一覧によると、2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円です。改定前の1,121円から56円、率にして5.0%の引上げとなりました。都道府県ごとの引上げ額は54円から65円で、発効日は2026年10月1日から12月2日まで分かれています。
2026年10月16日時点では、まだ改定前の最低賃金が適用されている地域もあります。改定額だけでなく、自社の各事業場で新しい最低賃金がいつから適用されるかも、全国一覧で確認してください。
全国平均ではなく、働く場所に適用される最低賃金を見る
地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められています。さらに、特定の産業には特定(産業別)最低賃金が定められている場合があり、両方が適用されるときは高い方の最低賃金額以上の賃金が必要です。
派遣労働者には、派遣元の所在地ではなく、派遣先の事業場の最低賃金が適用されます。複数地域に事業所がある企業や、派遣労働者がいる職場では、本社所在地の金額だけで判定しないようにします。
月給制でも、最低賃金は時間額に直して確認する
月給制でも、最低賃金と比較するときは時間額に換算します。計算式は、最低賃金の計算に含める月給額 ÷ 1か月平均所定労働時間です。1か月平均所定労働時間は、年間の所定労働時間を12で割って求めます。残業を含む、その月の実労働時間で割る計算ではありません。
計算に使う月給には、すべての支給額を含めるわけではありません。臨時に支払う賃金、賞与など1か月を超える期間ごとの賃金、所定労働時間外・所定休日の労働に対する賃金、深夜割増分、通勤手当、家族手当、精皆勤手当は除きます。基本給だけでなく算入できる手当も含めて時間額を求め、適用される最低賃金以上かを確かめます。

最低賃金への適合と「賃金表の圧縮」は別に見る
ここからはUnion Strategyによる実務上の整理です。最低賃金は法令上の下限ですが、賃金表は社内で仕事や役割の違いをどのように処遇へ反映するかを示す仕組みです。最低賃金の引上げに合わせて最下位の賃金だけを引き上げると、その一つ上の等級との間隔が縮むことがあります。
改定前後で比べたいのは、隣り合う等級の賃金差、昇格時の増額、初任給と在籍者の賃金との関係です。比較するときは、所定労働時間や含める賃金項目をそろえます。最低賃金を守っていても、こうした差が縮めば、経験や役割の違いが賃金に反映されにくくなる可能性があります。
これは最低賃金法が「等級間の差を一定以上に保つ」と定めているという意味ではありません。法令順守とは別に、自社の賃金制度として役割差や昇格の意味が保たれているかを労使で確認する論点です。
労組が確認したいのは、最低額・適用日・賃金表
- 事業場ごとに、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の適用対象か。両方なら高い方で判定しているか
- 今年度の改定額が、各地域でいつ発効するか
- 最低賃金の計算に含める賃金と除外する手当を分けているか
- 隣り合う等級の賃金差や、初任給と在籍者の賃金との関係がどう変わるか
- 昇格時の上昇幅が以前より小さくなっていないか
出典
厚生労働省 最低賃金特設サイト「最低賃金のチェック方法」・「対象となる賃金は?」
注記:全国加重平均1,177円は各事業場に一律適用される最低賃金額ではありません。賃金表の圧縮をどのように点検するかという部分は、Union Strategyによる分析・提案です。
