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等級別賃金とは?賃金表の仕組みと、他社と比べるときの見方

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能力や仕事を基準に等級を設け、等級に給与の金額や範囲を対応させる制度の模式図。基準は会社によって異なります。

給与制度の資料には「等級」「号俸」「賃金レンジ」といった言葉が出てきます。どれも給与に関わりますが、それぞれが決めていることは違います。まずは等級から給与額が決まる仕組みをつかみ、そのうえで、自社と他社の賃金をどう比べればよいのかを見ていきましょう。

等級は、給与を決めるための区分

等級とは、社員の能力や、担う仕事・役割などに応じて設ける社内の区分です。等級別賃金は、その区分ごとに金額や支給範囲を定める賃金の仕組みを指します。

等級を決める基準は一つではありません。職能資格制度は、主に仕事を行う能力を基準にします。職務等級制度は、担当する仕事の内容や責任を基準にします。役割等級制度は、期待される役割の大きさなどを基準にします。実際には、これらを組み合わせた制度もあるため、名称だけで自社の仕組みを判断せず、等級の定義を読む必要があります。

厚生労働省のマニュアルでも、能力を基準とする職能資格と、仕事や役割に基づく等級を区別し、それぞれの定義を照合して対応を考える方法が示されています。「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」32〜35頁

なお、等級と役職は同じものではありません。「課長」は組織上の役職でも、その会社における給与上の等級と一対一で対応するとは限りません。同じ役職でも等級が違う場合があり、部下を持たない専門職に高い等級を設ける会社もあります。

同じ等級でも、給与が同じとは限らない

等級が分かれば必ず給与額が一つに決まる、というわけではありません。賃金表には、等級ごとに一つの額を置く方式もあれば、下限から上限までの幅を設ける方式もあります。この幅が「賃金レンジ」です。

同じ等級の中に号俸という段階を設け、その位置で額を決める場合もあります。号俸の進み方や、レンジ内での昇給は、評価や経験など、会社が定めるルールによって変わります。

厚生労働省の2025年の職務給事例集には、等級をさらに号俸に分ける会社や、同じ等級内で能力・成果による差を設ける会社が掲載されています。一つの等級に一つの給与しかないと考えると、こうした違いを見落とします。「日本における職務給 取組事例集」B社・C社

自社の給与制度を読むときは、次の三つを別々に確かめると理解しやすくなります。

等級の基準、等級に対応する賃金表、号俸や評価による個人への適用を分けて読む。会社によって仕組みや別途支給する賃金項目が異なる。
同じ等級でも給与が同じとは限りません。制度を読むための整理図であり、特定企業の給与決定手順ではありません。

さらに、等級に対応する賃金が基本給の全部なのか、一部分なのかも確認します。年齢給や手当を別に支給する制度なら、等級別の表だけを見ても、毎月の給与全体は分かりません。

昇給、昇格、賃金表の改定は何が違う?

昇給は、給与額が上がることです。同じ等級のまま、評価などによって額が上がる場合もあります。

昇格は、社内の等級が上がることです。上位の等級に必要な能力や仕事などの基準を満たしているかによって判断されます。昇格した際の給与額は、移行ルールに従って決まります。

賃金表の改定は、等級や号俸に対応する金額そのものを変えることです。ベースアップで賃金表を引き上げれば、同じ等級・号俸にとどまる人の給与も改善できます。

したがって、「給与を上げたい」という話でも、同じ等級内の昇給、上位等級への昇格、賃金表全体の引上げでは、変更する箇所が違います。まず自社で給与額が決まるまでのつながりを確認すると、何について議論しているのかが明確になります。

他社と比較するなら、等級番号より仕事を見る

自社の「3等級」と他社の「3等級」は、共通の資格ではありません。番号の付け方も、求める能力や責任の範囲も、会社が決めています。他社の課長と自社の課長を比べる場合も同様です。

比較の手がかりになるのは、実際に担っている仕事です。次の項目を並べると、名称だけでは見えない違いが分かります。

見る項目比べる内容
主な仕事何を担当し、どの成果を求められるか
判断の範囲自分で決められること、上司の承認が必要なこと
責任の範囲人員、予算、品質、安全など、何に責任を負うか
専門性その仕事に必要な知識や技能は何か

ネスレ日本は、マーサーの公開対談で、職務評価の手法を使って自社のポジションを評価し、等級ごとの給与レンジを市場と比べると説明しています。その際には現場に聞き取りを行い、仕事の難しさや貢献を確かめています。ネスレ日本の報酬マネジメント事例

これは、等級名の置き換えだけでは比較が完成しないことを示す事例です。どの組合も同じ評価手法を導入する必要がある、という意味ではありません。まずは、比べる仕事と責任を説明できることが出発点です。

賃金表と、在籍者の平均給与を分けて読む

比較先の仕事が対応していても、賃金表の額と実際の平均給与は別の情報です。

賃金レンジを比べれば、その仕事に対して会社が設定している給与の幅が分かります。在籍者の平均給与は、そこにいる人の経験や評価、レンジ内の位置などを反映します。平均が低くても、賃金表自体が低いとは限りません。

労働組合が処遇の課題を整理する際は、賃金表が低いのか、担っている仕事が等級に反映されていないのか、同じ等級内で昇給が進んでいないのかを分けて見ると、問題の所在をつかめます。この整理はUnion Strategyの提案です。

ただし、能力を基準とする制度では、仕事が増えただけで自動的に昇格するとは限りません。自社の等級基準と実際の運用の両方を読み、制度として説明がつくかを確かめます。

等級別賃金を見る意義は、平均給与の高低だけでは分からない「どの能力や仕事を、いくらで処遇する仕組みなのか」を理解できることにあります。会社の市場比較の説明を詳しく確かめたい場合は、市場水準との比べ方も参照してください。

出典・参考資料

  • 厚生労働省「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」、2021年3月作成。32〜35頁の等級の対応、45〜46頁の支給範囲・昇給運用を参照。同一企業の正社員とパートタイム・有期雇用労働者の処遇点検を主な対象とする資料です。PDF
  • 厚生労働省「日本における職務給 取組事例集」、2025年3月発行。B社・C社などの等級と給与の仕組みを参照。PDF
  • マーサー「ネスレ日本が考える『誠実な報酬マネジメント』とは」。掲載ページに公表年月の記載なし。職務の評価と市場比較に関する同社担当者の説明を参照。掲載ページ

出典確認日:2026年9月21日。

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