来年の春闘に向けて準備を始めたいものの、どの資料を集め、職場で何を聞けばよいか迷っていませんか。春闘は、賃上げ率を決めるだけでなく、働く人の困りごとを改善要求にまとめ、会社と話し合う機会です。2027年春闘へ向けた秋の準備を、今年の振り返り、職場の声、賃金・経営資料の順に整理します。
秋は、自分たちの職場の課題をつかむ時期
春闘では、多くの組合が春に賃金や労働条件の改善を要求します。連合や産業別労働組合の方針は、要求を考えるうえで共通の目安になります。2026年春闘では、連合が前年10月23日に基本構想、11月28日に闘争方針を公表しました。連合「2026年春闘」
ただし、全国の方針だけでは、自社のどの職務の賃金が低いのか、どの制度が使いにくいのかまでは分かりません。そこで、秋のうちに自分たちの実態を整理しておけば、方針を自社の要求に結び付けて検討しやすくなります。
以下はUnion Strategyが提案する準備の進め方です。2027年春闘の公式日程や要求率を示すものではありません。要求の決定・提出時期は、所属産別の方針と自組合の機関決定の日程に合わせます。
最初は、今年の回答と実際の改善を振り返る
手元に置きたいのは、2026年の要求書、会社回答、労使合意、改定後の賃金表や制度の案内です。それぞれを読む目的は、「何を求めたか」「何が決まったか」「職場でどう変わったか」をつなぐことです。
賃金なら、平均の回答額だけでなく、ベア・定期昇給の内訳、配分された対象、改定後の水準を確認します。休暇や手当の改善なら、制度が始まったか、必要な人が利用できているかを職場で聞きます。要求に対して会社が継続検討とした項目も、話し合いがどこまで進んだかを確かめます。
今年の成果を整理せずに新たな要望だけを並べると、すでに改善されたことと、残っていることが混ざります。振り返りでは、成果を組合員に伝えながら、来年も取り組む課題を見つけます。
職場では「いくらほしいか」の前に、困っていることを聞く
組合員の意見を集めるときは、希望する賃上げ額に加えて、今の働き方や生活のどこに負担を感じているかを聞きます。金額だけでは、基本給の底上げを求めているのか、特定の手当や制度の改善を求めているのかが分からないためです。
たとえば、アンケートや職場懇談会で次のように尋ねられます。
- 今年の賃上げや制度改善で、変わったと感じることはありますか。
- 賃金、仕事の負担、休暇、育児・介護との両立などで、解決したいことは何ですか。
- 利用したかったのに使えなかった制度はありますか。どの条件が合いませんでしたか。
これは質問例です。すべてを一度に聞く必要はありません。回答しにくい個人事情まで求めず、何を要求検討に使うかを説明して集めます。回答が一部の職場に偏っていれば、声の少ない職場にも確認します。回答数の多さだけでなく、困りごとの内容と負担の大きさを読むためです。
賃金・経営・外部水準の資料をそろえる
職場から出た声を要求にするには、その背景を確かめる資料が必要です。最初から膨大な資料を求めるより、検討する論点に対応させて集めます。
| 確かめたいこと | そろえたい資料 | 分かること |
|---|---|---|
| 自社の賃金がどう変わったか | 改定前後の賃金表、回答内訳、対象人数 | 改善した項目と、対象になった層 |
| 他社と比べてどの水準か | 産別・連合の賃金資料、条件を確認できる他社情報 | 同じ仕事や年齢などで見た外部水準 |
| 会社がどう事業を見通しているか | 決算資料、事業計画、会社の説明資料 | 足元の収益と今後の見通し、変動する前提 |
| 制度が職場で使えているか | 制度規程、利用状況、組合員の意見 | 対象条件と、利用上の困りごと |
外部の春闘集計は、世の中の動きを知る入り口になります。連合の2026年最終集計では、平均賃金方式の定昇相当込み賃上げは、5,368組合の加重平均で1万6,400円、5.01%でした。連合「第7回(最終)回答集計結果」
これは2026年の交渉結果です。2027年の要求率としてそのまま使う数字ではありません。自社のベアだけと比較することもできません。秋には、数字の大小を先に判定するより、自社が必要とする比較に使える資料を見つけておきます。入手先は、他社の賃金データを集める方法で詳しく扱います。

資料がそろう前でも、要求の候補は整理できる
秋の段階では、会社の次年度計画がまだ確定していないこともあります。その場合も、今年の実績や職場の困りごとは整理できます。
執行部では、要求の候補ごとに「誰の、何を改善したいか」「今ある根拠」「追加で知りたいこと」をまとめます。たとえば手当の対象条件が実態に合っていないという声なら、まず規程と対象者の状況を確認できます。次年度の業績見通しがなければ、すべての検討を止めなければならないわけではありません。
足りない資料は、何を判断するために必要かを会社へ伝え、入手の時期を相談します。見通しを使う場合は、確定した実績と区別します。職場の意見を集め直す時間や執行部で検討する時間も含めて、要求決定日から準備を逆算してください。
秋の段階で目指したいのは、完成した要求書を無理に作ることではなく、来年解決したい課題を職場と共有し、その根拠をそろえることです。資料から具体的な要求額へ進むときは、春闘の要求額の組み立て方が次の検討につながります。
出典・参考資料
- 日本労働組合総連合会(連合)「2026年春闘」、基本構想は2025年10月23日、闘争方針は2025年11月28日掲載。前年秋の方針公表時期を参照。
- 日本労働組合総連合会(連合)「2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果」、2026年7月3日公表、7月1日10時集計。平均賃金方式の定昇相当込み賃上げを参照。
出典確認日:2026年9月21日。準備の進め方、資料の整理、職場への質問例はUnion Strategyの提案です。
