基本給・賞与・福利厚生はどう違う?年収だけでは分からない処遇の見方

公開日:

更新日:

基本給は給与の土台、賞与は月給とは別に支給する賃金、福利厚生は生活や就業を支える仕組み。

会社の処遇を考えるとき、毎月の基本給だけを見るか、賞与や福利厚生まで含めるかで印象は変わります。とはいえ、社宅の利用権と現金の給与を、そのまま足し算できるわけでもありません。それぞれの仕組みと役割を知ると、自社の処遇のどこが充実し、どこに不足があるのかを整理しやすくなります。

基本給は給与の土台、賞与は別の時期に支払う賃金

基本給は、手当や残業代とは分けて定める、給与の基本となる部分です。仕事の内容、能力、評価、年齢や勤続年数など、何をもとに額を決めるかは会社の賃金制度によって異なります。月給だけでなく、日給や時間給という定め方もあります。厚生労働省「モデル就業規則」第34条の解説

給与明細の支給総額は、基本給そのものではありません。基本給に、役職手当や住宅手当、残業代などが加わっているためです。残業が多い月の支給総額だけを見ても、通常の勤務で得られる給与は分かりません。

賞与は、月々の給与とは別に支払われる賃金です。会社業績や本人の評価に応じて変わる制度も、一定の月数を基本にする制度もあります。「基本給の何か月分」という方式なら、基本給が増えると賞与額にも影響しますが、独自の算定基礎額を使う会社では同じ動きになりません。

賞与制度を設けること自体は法律上の義務ではありません。設ける場合には、対象時期や算定基準などを就業規則に明確にする必要があると、厚生労働省は説明しています。自社の賞与が何で決まるかは、その規程や労使合意で確認できます。同「モデル就業規則」第50条の解説

福利厚生は、給与とは違う形で生活や就業を支える

福利厚生には、社会保険のように法令に基づくものと、会社が独自に設けるものがあります。後者には、社宅、食事補助、慶弔見舞金などが含まれます。厚生労働省の統計でも、企業負担の費用を「法定福利費」と「法定外福利費」に分けています。就労条件総合調査の用語定義

ここで少し紛らわしいのが住宅手当です。生活を支えるという目的では福利厚生と呼ばれることがありますが、現金で支給される住宅手当は給与として課税されます。「福利厚生という名前が付いているから、給与と別枠で非課税」とは限りません。国税庁「使用人に社宅や寮などを貸したとき」

処遇を整理する際は、名称よりも受け取り方を見ると分かりやすくなります。現金で受け取るのか、施設やサービスを利用するのか。そして、毎月受け取れるのか、対象条件を満たすときだけ使えるのか、という違いです。

基本給と毎月の手当、賞与、社宅や食事補助の受け取り方を分類した図。制度の目的と給与としての区分は重なる場合がある。
制度の呼び名だけでなく、受け取り方から処遇を整理した図です。Union Strategy作成。

「総報酬」は、給与以外にも目を向ける考え方

給与に加えて福利厚生なども含め、会社が従業員に提供するものを広く捉える考え方が「総報酬」です。何を含めるかは資料や会社の方針によって異なるため、比較の際には範囲を確かめます。

例えばネスレ日本の担当者は、マーサーが公開した対談で、固定給・変動給・福利厚生に加え、成長機会と職場環境も報酬方針に含まれると説明しています。働く魅力を、給与額だけでは捉えていない実例です。ネスレ日本の報酬方針に関する対談

ただし、研修の機会や働きやすい環境を、本人が自由に使える現金と同じように合算することはできません。広く見ることと、一つの金額にまとめることは別です。

会社の人件費も、従業員の年収とは範囲が違います。厚生労働省が定義する労働費用には、現金給与のほか、会社が負担する社会保険料、退職給付、教育訓練などの費用が含まれます。会社から「一人当たりこれだけ負担している」と示されたときは、その内訳を見る必要があります。就労条件総合調査の用語定義

自社の処遇は、三つに分けて並べると見えてくる

Union Strategyでは、自社の処遇を理解する最初の作業として、次の三つを別々に整理することを勧めます。

整理するもの見る資料と内容
通常の勤務で得る給与基本給と毎月の固定手当。残業代は別欄にする
年間で変動する給与賞与の算定方法、支給実績、業績や評価との関係
利用できる生活支援社宅・食事補助などの対象者、本人負担、利用できる場所や期間

年収が同じでも、毎月の給与が厚い会社と、賞与の割合が高い会社では、家計の見通しが違います。福利厚生が充実していても、勤務場所や家族状況によって使える制度は変わります。金額の大小に加え、自分たちがどう受け取れるかまで分かるのが、この整理の利点です。

組合の改善要求にもつながります。毎月の生活費が課題なら固定的な給与、年ごとの収入変動が課題なら賞与の仕組み、住居や食事の負担が課題なら対応する支援制度を詳しく見ます。最初から改善項目を一つに決めず、組合員が困っていることと制度の役割を合わせて考えられます。

住宅支援の違いは住宅手当と社宅の解説、食事の支援方法は食事補助の種類で詳しく扱います。

出典・参考資料

  • 厚生労働省「モデル就業規則」、2025年12月版。第34条「基本給」、第50条「賞与」の解説。PDF
  • 厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 主な用語の定義」、2021年11月公表。「労働費用」「法定福利費」「法定外福利費」の定義を参照。金額データは使用していません。PDF
  • 国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」、2026年4月1日現在の法令等。掲載ページ
  • マーサー「ネスレ日本が考える『誠実な報酬マネジメント』とは」、公表年月の記載なし。担当者対談の報酬方針を参照。掲載ページ

資料確認日:2026年9月21日。

春闘、賃金、人事制度の記事をメールで。

登録は無料です。いつでも購読を解除できます。

記事へのご指摘や、取り上げてほしいテーマは、お問い合わせからお寄せください。