同じ会社で働いていても、住宅手当を受け取る人と、受け取らない人がいます。社宅を利用する人もいるため、制度名や支給額だけでは支援の違いが分かりにくいものです。住宅手当の仕組み、金額を見るときの目安、社宅との違いを整理し、自社の制度を読み解きます。
住宅手当は、住居費を支えるための手当
住宅手当は、家賃などの住居費を支える目的で会社が支給する手当です。「家賃補助」「住宅補助手当」といった名称もあります。支給の有無、対象者、計算方法は会社の制度によって異なります。厚生労働省のモデル就業規則も、どのような手当を設け、いくらにするかは各事業場で決めると説明しています。厚生労働省「モデル就業規則」諸手当の解説
一定の月額を支給する方式と、家賃の一定割合を上限付きで補助する方式では、家賃が変わったときの支援額が違います。制度を見るときは、金額だけでなく、何をもとに計算するのかも読みます。
支給条件は、その会社の賃金規程や住宅手当規程で確認できます。以下は全国共通の条件ではなく、規程を読む際の確認項目です。
| 確認する条件 | 具体的に読む箇所 |
|---|---|
| 住まいの種類 | 賃貸住宅だけか、持家も含むか。社宅との併用はできるか |
| 契約と費用負担 | 本人名義の契約が必要か、実際の家賃負担をどう確認するか |
| 本人や世帯の条件 | 年齢、世帯主、扶養家族などの条件があるか |
| 勤務地・通勤 | 勤務地による区分、通勤距離などの条件があるか |
| 支給期間と手続き | いつからいつまで受け取れるか、引越しなどの際に何を届け出るか |
「世帯主」と書かれていても、住民票上の世帯主を指すのか、主に生計を支える人を指すのかで対象は変わります。規程で意味が分からない言葉は、申請前に会社の説明を確かめておくと、受給できるかを判断しやすくなります。
住宅手当の相場は、どの平均かを見て使う
厚生労働省の2025年就労条件総合調査では、「住宅手当など」を支給された労働者一人当たりの平均額は、月1万8,700円でした。対象は2024年11月分です。全国16大産業の常用労働者30人以上の民営企業を対象とする調査で、手当を受け取っていない人を含む平均ではありません。調査概況・第18表
これは相場を知る参考値ですが、「この額を支給すれば十分」という基準ではありません。勤務地の家賃、支給対象、社宅の有無が違えば、同じ金額でも本人の負担は変わります。
実際の制度改定では、住居費の変化を理由に増額する例もあります。トラスコ中山は2025年6月27日、都市部を中心とした住宅費の高騰への対応として、同年7月から住宅補助手当を全国一律で月1万円増額すると発表しました。一社の増額事例であり、全国の標準的な増額幅を示すものではありません。トラスコ中山の発表
社宅との違いは、現金を渡すか、住まいを貸すか
住宅手当は現金を支給する制度です。社宅は、会社が所有する、または借りた住宅を従業員に貸す制度です。会社が外部から物件を借りて貸すものは「借り上げ社宅」と呼ばれます。
本人が契約した部屋の家賃を会社が補助する場合は、会社が借りて貸す社宅とは区別されます。似た額の支援でも、契約の形が違うためです。

税務上も扱いが異なります。国税庁によると、現金の住宅手当や、本人が直接契約している住宅の家賃負担は、給与として課税されます。一方、従業員向けの社宅は、本人から「賃貸料相当額」の半分以上を家賃として受け取っていれば、給与として課税されません。国税庁「使用人に社宅や寮などを貸したとき」
この「賃貸料相当額」は、会社が大家に支払う家賃そのものではありません。建物・敷地の固定資産税の課税標準額などから計算する税務上の額です。「借り上げ家賃の半分を本人が払えばよい」と読み替えないようにします。
自社の住宅支援を比べるときは、本人に残る負担を見る
手当と社宅を比べるなら、手当の月額と会社の社宅費用を並べるだけでは足りません。本人の家賃負担、手当の税引き後の受取額、社宅の自己負担額に加え、住む場所を選べる範囲や利用期限も違うからです。
組合として制度を見直すときは、まず「制度を使っている人」と「条件により使えない人」を分けて、家賃などの負担を聞くと論点が明確になります。受給者の負担増が課題なら支給額が、同じような負担を持つ人が対象外になっているなら支給条件が、主な検討対象になります。
一律の増額だけが改善策ではありません。申請の分かりにくさを直すことや、社宅を出た後の支援を整えることも選択肢です。住宅手当の平均額を入口に、自社で誰がどの支援を受け、どれだけ住居費を負担しているかを見ると、必要な改善を話し合えます。
給与全体との関係は、基本給・賞与・福利厚生の違いで整理しています。
出典・参考資料
- 厚生労働省「モデル就業規則」、2025年12月版。諸手当の解説を参照。PDF
- 厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査の概況」、2025年12月公表。第18表、2024年11月分の当該手当受給者平均。PDF
- トラスコ中山「階段式の給与改定(ベースアップ)及び住宅補助手当の増額を実施!」、2025年6月27日公表。発表本文
- 国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」、2026年4月1日現在の法令等。掲載ページ
資料確認日:2026年9月21日。制度比較と見直しの着眼点はUnion Strategyの整理です。
