2026年版過労死白書から何が分かる?長時間労働とメンタルヘルスの確認点

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長時間労働は全社平均に加えて分布と偏りを確認し、メンタルヘルスは対策の実施と職場の改善を確認する。

2026年版の過労死等防止対策白書は、長時間労働やメンタルヘルス対策の状況をまとめ、建設業・自動車運転従事者・IT産業などの働き方を分析しています。全国的な傾向から何が分かり、自社の職場を見るときには何に注意すればよいのでしょうか。

厚生労働省が2026年10月9日に公表した白書をもとに、主要な数字の対象と読み方を整理します。そのうえで、全社平均だけでは見えない長時間労働の偏りや、メンタルヘルス対策の実効性を確かめる視点を紹介します。

2026年版過労死等防止対策白書は何を扱うのか

過労死等防止対策白書は、過労死等防止対策推進法に基づき政府が毎年取りまとめる報告書です。2026年版は11回目で、2026年10月9日に閣議決定されました。

今回の白書では、過労死等に関する労災請求件数の増加要因や、建設業、自動車運転従事者、IT産業などの働き方について分析しています。労災支給決定の状況に加えて、長時間労働の削減、メンタルヘルス対策、ハラスメント対策、企業・団体の取組事例も紹介されています。

白書に掲載された数字には、2025年など、公表年より前の実績も含まれます。労災の請求件数と支給決定件数も意味が異なるため、「いつの、誰を対象に、何を数えた数字か」を確かめて読む必要があります。

「週60時間以上が7.7%」は誰を対象にした数字か

白書が総務省「労働力調査」をもとに示した2025年の数字では、週40時間以上働く雇用者のうち、週60時間以上働く人の割合は7.7%でした。調査する月の末の1週間の就業時間に基づく指標で、分母はすべての雇用者ではありません。「働く人全体の7.7%が週60時間以上」という意味ではない点に注意が必要です。

この「週60時間」は、残業だけでなく、その週に働いた時間全体を指します。月単位で管理する法定の時間外労働や休日労働とは、定義も集計期間も異なります。自社で確認する際は、所定労働時間に加え、時間外・休日労働、深夜の勤務、持ち帰り仕事などを把握し、長時間労働の実態が記録から抜け落ちていないかを確かめます。

メンタルヘルス対策の実施率と職場の改善は別

白書に掲載された2025年の「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果では、メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合は63.0%でした。一方、労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェックの実施割合は32.5%です。対象の範囲と測る取組が異なるため、この2つは対策の進み具合を同じ尺度で比べる数字ではありません。

対策を実施していることと、職場が改善していることも別です。相談しやすい窓口があるか、相談後に業務量や配置が見直されたか、休職・復職時に支援を受けられたかまで見る必要があります。ストレスチェックの個人結果などは安易に集めず、少人数の集計で個人が特定されることにも配慮しながら、集団分析と職場改善の状況を確認します。

労使協議では、部署・職種別の時間と負担の偏りを見る

白書は全国的な状況を知る材料ですが、自社の職場環境を説明する資料ではありません。組合は会社が保有する勤怠・安全衛生データを、比較可能な期間と定義で示してもらうことから始められます。

確認する指標自社の資料で確かめる内容
長時間労働月間の時間外・休日労働の平均と分布。長い人の人数・時間数と部署・職種別の偏り
勤務間インターバル終業から次の始業までの休息時間。制度の有無と実際の取得状況
年次有給休暇取得率だけでなく取得日数、未取得者数、部署別の差
メンタルヘルス対策相談窓口や産業医などに相談できる体制。集団分析後の職場改善
休職・復職利用状況と復職後の負荷調整。ただし個人が特定されない集計
長時間労働は平均・分布・上位層を部署や職種別に比較。休息・年休は制度の有無と実際の利用を確認。メンタルヘルスは対策実施後の相談体制と職場改善を見る。全国の割合を自社の合格ラインにはしない。
白書の全国的な傾向を自社の確認につなげるための整理です。全国の割合を自社の合格基準とするものではありません(Union Strategy作成)。

たとえば平均残業時間が減ったとしても、繁忙部署で長時間労働者が増えていれば、職場単位の業務配分を見直す余地があります。特定の職種や役職に負担が集中していないか、昨年と同じ部門・同じ期間で比較することが必要です。

負担が集中する職場の改善策を話し合う

データを集めるだけでは働き方は変わりません。労組としては、時間外労働が集中する部署での人員配置、仕事量の平準化、繁忙期の応援、管理職も含めた勤務時間の把握、相談後のフォロー体制など、改善方法まで議題にする必要があります。

  • 部署別・職種別の時間外労働と休日労働を、前年度と同じ定義で比較できるか
  • 長時間労働が続く人には、医師による面接指導や業務量調整につながる仕組みがあるか
  • 勤務間インターバルや年休が取りにくい職場の理由を把握しているか
  • ストレスチェックなどを実施した後、職場ごとの改善策を誰が決め、いつ確認しているか

全国の割合は、自社の安全性や対策の十分さを判定する「合格ライン」ではありません。白書で全国的な課題をつかみ、自社では同じ期間・同じ定義のデータを比べて、負担が集中する職場と改善策を検討する。この使い分けが、白書を労使協議で生かすポイントです。

関連情報・出典

厚生労働省(2026年10月9日)「令和8年版 過労死等防止対策白書を公表します」

厚生労働省「過労死等防止対策白書(2026年版・本体の入口)」

厚生労働省「令和8年版過労死等防止対策白書 概要版」

※白書の内容・数字と、労使協議で確認するための指標案は区別しています。部署別比較・協議事項はUnion Strategyによる実務上の提案です。

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