定年後も働けると分かっていても、再雇用後の給料がどう決まるかは、生活設計に直結する問題です。「これまでの何割になる」と説明されるだけでは、仕事が変わるためなのか、給与制度が変わるためなのかが見えてきません。再雇用の基本と、賃金が変わる理由を整理します。
再雇用は、定年後に改めて雇用契約を結ぶ仕組み
再雇用制度は、定年でいったん退職した人と、改めて雇用契約を結んで働き続けてもらう制度です。定年年齢そのものを延ばす「定年引上げ」とは異なります。再雇用では、仕事内容、勤務時間、賃金などを改めて決めることがあります。
企業には、65歳までの雇用を確保するため、定年の廃止、65歳までの定年引上げ、希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入のいずれかが求められています。2025年4月以降、継続雇用の対象者を労使協定の基準で限定できる経過措置はなくなりました。ただし、これは全社一律に定年を65歳にする制度ではありません。厚生労働省「高年齢者雇用確保措置の経過措置の終了」
雇用を続けることと、定年前の給与をそのまま維持することは、別の論点です。再雇用後の処遇を理解するには、提示された契約の中身を見る必要があります。
給料が変わる理由は、仕事・時間・給与制度に分けて考える
再雇用時の減収には、異なる理由が重なっている場合があります。主に整理したいのは、次の三つです。
一つ目は、仕事や責任の変化です。 管理職を外れ、部下の評価や部署の予算管理を担わなくなる場合などです。役職手当がなくなるなら、対応する責任も変わっているかが確認のポイントになります。
二つ目は、勤務時間の変化です。 本人の希望などで勤務日数や一日の時間を減らすと、時間に応じて月額が変わる場合があります。月額の減少と、時間当たりの賃金の低下は分けて考えます。
三つ目は、適用される給与制度の変化です。 再雇用者向けの賃金表へ移る、基本給の算定方法が変わる、賞与や手当の対象が変わる、といったケースです。仕事内容が続いていても、制度が切り替われば給与が変わることがあります。

どの理由が自社に当てはまるかは、規程と実際の仕事を見なければ分かりません。「再雇用だから何割」という説明を、仕事や時間の変化まで表す説明と受け取らないことが大切です。
同じ仕事なら、同じ給料でなければならない?
定年後に有期契約で再雇用される人にも、パートタイム・有期雇用労働法が適用されます。通常の労働者との待遇差を考える際には、仕事の内容や責任、職務・配置の変更範囲などを見ます。
厚生労働省は、定年後の継続雇用であることだけで待遇差が不合理ではないと認められるわけではない、と説明しています。同時に、実際に仕事や配置変更の範囲などが異なる場合は、その違いに応じた賃金差が許容されるとしています。厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A」Q1-4
そのため、「再雇用なら減額できる」「同じ作業をしていれば減額はすべて違法」と一律には言えません。基本給、手当、賞与がそれぞれ何に対して支払われ、比較する相手とどんな違いがあるのかを確かめます。
待遇差の法的な評価と、組合が目指す処遇改善も区別できます。例えば、引き続き後輩を教える役割があるなら、その貢献を評価や給与に反映する案を話し合えます。法的な争いの有無だけが、制度を改善する理由ではありません。
仕事に応じた仕組みに見直した企業もある
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が紹介する島根県の小川商店は、定年年齢の引上げに合わせて賃金・評価制度を改定しました。掲載事例では、継続雇用者にも原則として正社員と同じ賃金・評価の仕組みを用い、働き方や責任に応じて役職を個別に扱っています。JEED「有限会社 小川商店」人事管理制度の概要
これは一社の事例ですが、再雇用後の賃金制度には設計の選択肢があることが分かります。年齢に応じた一律の扱いだけでなく、担当する仕事と本人が望む働き方をもとに処遇を決める方法もあります。
契約前に、月額・年額・働き方を一緒に見る
本人や組合が再雇用条件を読む際は、定年前後の労働条件を並べると、変化の理由を追いやすくなります。
| 項目 | 並べて確認する内容 |
|---|---|
| 仕事と責任 | 続ける業務、外れる業務、指導や管理の役割 |
| 働く時間 | 週の勤務日数、一日の所定労働時間、残業の見込み |
| 月々の給与 | 基本給、各手当、時間を短くした場合の計算方法 |
| 年間の収入 | 賞与の有無と算定方法、支給条件 |
| 契約の期間 | 更新の条件、いつまで働ける制度か |
短時間勤務を選ぶなら、月額だけでなく、同じ給与項目を所定労働時間で割った額も比べられます。仕事量が以前と同じままなら、短くした時間に収まるのかも、本人にとって切実な問題です。
年金などの公的給付は生活設計に関わりますが、会社からの給与と分けて書き出すと、何によって収入が変わるのかが明確になります。減収額だけを見て受け止めるより、「仕事はどう変わるか」「その仕事にいくら支払われるか」「どの働き方なら続けられるか」を一緒に考えることが、納得できる再雇用条件への出発点になります。
給与の各項目の違いは、基本給・賞与・福利厚生の解説で確認できます。
出典・参考資料
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正」内「高年齢者雇用確保措置の経過措置の終了(2025年3月31日)」。掲載年月の明示なし。2025年4月以降の措置を参照。掲載ページ
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」、2025年3月31日改訂、4月1日適用。Q1-4を参照。掲載ページ
- 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「高年齢者活躍企業事例サイト 有限会社 小川商店」。掲載内容は2026年2月13日現在、公表年月の明示なし。出所は「70歳雇用推進事例集2025」。掲載ページ
資料確認日:2026年9月21日。給与の変化の整理方法はUnion Strategyの提案です。
